KNOWLEDGE 不動産豆知識
2026.07.13
【専門家監修】認知症の親の不動産相続、あなたはどうする?手続き・成年後見制度・トラブル回避策を徹底解説
親の認知症という診断は、ご家族にとって大きな転機となります。日々の介護や体調管理に追われる中で、ふと「実家の不動産はどうなるのだろう?」「親が判断できなくなったら、相続手続きはどう進めればいいの?」といった不安を感じることは、決して珍しいことではありません。むしろ、大切な親御さんの将来を真剣に考えているからこそ抱く、自然な悩みといえます。
しかし、認知症が進むと不動産の管理や売却、相続手続きには法的な壁が立ちはだかるのも事実です。この記事では、そんな不安を抱える方に向けて、認知症の親御さんを持つご家族が知っておくべき「不動産相続の基本」と「トラブルを避けるための対策」を、専門家の視点から丁寧に解説します。複雑な制度を一つずつ紐解きながら、ご家族にとって最善の選択ができるようサポートしますので、まずは肩の力を抜いて読み進めてみてください。
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認知症が不動産相続に与える影響とは
親が認知症と診断され、判断能力が低下した場合、これまで当たり前だった不動産の管理や売却、そして将来的な相続手続きは、一気に複雑で困難なものへと変わってしまいます。ここでは、認知症が不動産相続に具体的にどのような影響を与えるのか、その現状と法的・実務的な壁について解説します。
親の判断能力低下と不動産管理の難しさ
認知症により親の判断能力が低下すると、不動産の管理は非常に難しくなります。例えば、自宅の修繕が必要になった場合、親自身が適切な業者を選び、契約内容を理解して費用を支払うことが困難になります。また、空き家になっている不動産を賃貸に出したり、不要な不動産を売却したりする際も、契約行為には本人の意思確認と判断能力が法的に求められるため、手続きを進めることができません。
親に代わって子がこれらの手続きを進めようとしても、法的な代理権がない限り、勝手に契約を結ぶことはできません。これにより、不動産の老朽化が進んだり、売却のチャンスを逃したりするなど、不動産価値の低下や不利益を招くリスクが生じます。
相続手続きにおける認知症の壁
親が認知症で判断能力が不十分な場合、相続手続きは大きな壁に直面します。特に問題となるのが「遺産分割協議」です。遺産分割協議は、相続人全員が合意して遺産の分け方を決めるものですが、認知症の親が判断能力を欠いていると、その意思表示が法的に無効とみなされる可能性があります。
協議が成立しなければ、不動産の相続登記も進めることができません。不動産の名義変更ができない状態が続くと、その不動産を売却したり、担保に入れたりすることができず、長期にわたって「塩漬け」状態になってしまうこともあります。また、相続税の申告や納付にも影響が出る可能性があり、結果として家族間のトラブルや余計な負担が生じるリスクが高まります。
認知症の親がいる場合の相続手続き
遺産分割協議の進め方と注意点
遺産分割協議とは、亡くなった方の財産を相続人全員でどのように分けるかを話し合い、合意する手続きです。しかし、親が認知症の場合、この遺産分割協議を進めることが原則としてできません。なぜなら、遺産分割協議は財産の内容を理解し、自分の意思で判断できる「意思能力」が必要だからです。認知症により意思能力が不十分と判断される場合、親は法的に有効な遺産分割協議に参加できないとされています。
このような状況で遺産分割協議を進めるには、主に二つの解決策が考えられます。一つは、親が元気なうちに遺言書を作成してもらうこと。遺言書があれば、遺産分割協議なしで相続手続きを進めることが可能です。もう一つは、成年後見制度を利用することです。成年後見人が選任されれば、後見人が親の代理として遺産分割協議に参加し、親の利益を最大化する形で話し合いを進めることができます。ただし、後見人はあくまで親の財産を守る立場であり、公平な分割を求めるため、特定の相続人に有利な分割は認められません。
相続登記の基本と認知症の場合の特例
相続登記とは、亡くなった方名義の不動産を相続人の名義に変更する手続きです。これは不動産の所有者を明確にし、売却や担保設定などを行うために不可欠な手続きです。相続登記は、法務局に申請することで行われますが、2024年4月1日からは義務化されており、正当な理由なく放置すると罰則の対象となる可能性があります。
認知症の親が不動産を相続する場合、通常の相続登記とは異なる特例や注意点が生じます。親が意思能力を欠いていると判断される場合、親自身が相続登記の申請手続きを行うことはできません。この場合も、遺産分割協議と同様に成年後見制度の活用が検討されます。成年後見人が選任されれば、後見人が親の代理人として相続登記の手続きを進めることができます。
また、遺産分割協議が成立していない状況で、法定相続分に応じて一旦共同相続登記を行うという方法もあります。これは、相続人全員の共有名義で登記を行うもので、その後に成年後見制度を利用して遺産分割協議を行い、単独名義に変更するといった流れも考えられます。いずれにしても、認知症の親がいる場合の相続登記は複雑になる傾向があるため、専門家への相談が不可欠です。
成年後見制度の活用:不動産相続との関わり
親が認知症と診断され、判断能力が低下した場合、その財産管理や相続手続きは非常に難しくなります。特に不動産は価値が高く、法的な手続きも複雑なため、適切な対応が求められます。このような状況で重要な役割を果たすのが「成年後見制度」です。この制度を理解し、適切に活用することで、認知症の親の財産を保護し、円滑な不動産相続へと繋げることができます。
成年後見制度の概要(任意後見・法定後見)
成年後見制度は、認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分な方を保護し、支援するための制度です。本人の財産を守り、不利益な契約から保護することを目的としています。この制度には、大きく分けて「任意後見制度」と「法定後見制度」の2種類があります。
任意後見制度は、本人がまだ十分な判断能力を持っているうちに、将来判断能力が低下した場合に備えて、あらかじめ「誰に」「どのような内容の支援をしてもらうか」を公正証書で契約しておく制度です。本人の意思が尊重される点が大きな特徴です。
一方、法定後見制度は、すでに判断能力が不十分な状態にある方のために、家庭裁判所が後見人等を選任する制度です。本人の判断能力の程度に応じて、「後見」「保佐」「補助」の3つの類型があり、それぞれ後見人等の権限が異なります。不動産相続においては、特に「後見」が選任されるケースが多く見られます。
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項目 |
任意後見 |
法定後見 |
|---|---|---|
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契約時期 |
本人が十分な判断能力があるうち |
本人の判断能力が不十分になった後 |
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制度の開始 |
本人の判断能力が低下した後、家庭裁判所への申立て |
家庭裁判所への申立て |
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後見人 |
本人が選んだ任意後見受任者 |
家庭裁判所が選任する(親族、弁護士、司法書士等) |
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権限 |
契約で定めた範囲内 |
法令で定められた広範な権限(類型による) |
|
特徴 |
本人の意思が最大限に尊重される |
本人の保護を目的とした制度 |
不動産管理における後見人の役割
成年後見人に選任されると、本人の財産を管理し、法的な手続きを代行する重要な役割を担います。不動産管理においては、以下のような具体的な職務があります。
後見人は、本人の不動産が適切に保全されているかを確認し、必要に応じて修繕の手配などを行います。また、固定資産税の支払いなど、不動産に関する各種費用の管理も後見人の職務です。
不動産を売却したり、賃貸に出したりするなどの処分行為は、本人の重要な財産に影響を与えるため、家庭裁判所の許可が必要となります。後見人は、本人の利益を考慮し、不動産の売却や賃貸が必要と判断した場合、家庭裁判所に申し立てを行い、許可を得た上で手続きを進めます。この際、売却代金の使途や賃料の管理についても、後見人は厳格な報告義務を負います。
成年後見制度の利用メリット・デメリット
成年後見制度の利用には、以下のようなメリットとデメリットがあります。
メリット
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財産の保護と管理: 判断能力が低下した本人の財産を、後見人が適切に管理し、不正な取引や浪費から保護します。特に不動産のような高額な資産は、専門家である後見人が管理することで、不当な処分を防ぐことができます。
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法的手続きの代行: 不動産の売買、遺産分割協議、相続登記など、本人の判断能力では困難な法的手続きを後見人が代行します。これにより、手続きが滞ることなく、円滑に進められます。
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安心感の提供: 家族が財産管理の負担から解放され、親の介護に専念できる環境が整います。また、後見人が選任されることで、家族間での財産を巡るトラブルを未然に防ぐ効果も期待できます。
デメリット
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手続きの煩雑さと時間: 制度利用の申し立てから後見人選任までには、書類の準備や家庭裁判所での審理など、時間と手間がかかります。
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費用負担: 後見人への報酬が発生します。また、申し立て費用や鑑定費用なども必要となる場合があります。これらの費用は本人の財産から支払われます。
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本人の意思決定の制限: 法定後見制度の場合、後見人が本人の財産管理や契約行為を代行するため、本人の意思が反映されにくい場面が生じることがあります。
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後見人の選任: 家庭裁判所が後見人を選任するため、必ずしも希望する人物が選ばれるとは限りません。親族以外の弁護士や司法書士が選任されるケースも多くあります。
利用開始までの流れと注意点
成年後見制度の利用を検討してから実際に後見人が選任されるまでには、いくつかのステップがあります。
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相談・検討: まずは、お住まいの地域の地域包括支援センターや、弁護士・司法書士などの専門家に相談し、制度の必要性や適切な類型について検討します。
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申し立ての準備: 申し立てに必要な書類(申立書、本人の戸籍謄本、住民票、診断書、財産目録など)を収集します。診断書は、本人の判断能力の程度を判断する上で重要な書類となります。
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家庭裁判所への申し立て: 必要書類を揃え、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てを行います。
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審理・調査: 家庭裁判所は、申し立て内容に基づき、本人や申し立て人、後見人候補者との面談、必要に応じて医師による鑑定などを行い、本人の状況や後見人の適格性を調査します。
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後見人等の選任: 審理の結果、家庭裁判所が後見人等を選任し、その旨を公示します。この時点で、後見人による職務が開始されます。
注意点として、申し立てには一定の費用(収入印紙代、郵便切手代、診断書作成費用、鑑定費用など)がかかること、後見人の選任までには数ヶ月程度の期間を要することが挙げられます。また、一度後見人が選任されると、原則として本人が死亡するまで制度が継続するため、慎重な検討が必要です。
認知症の親名義の不動産を売却・活用するには
親が認知症と診断された場合、その親名義の不動産を売却したり、賃貸物件として活用したりすることは、判断能力が低下しているために特別な手続きが必要となります。ここでは、具体的な進め方と注意点について解説します。
売却手続きの進め方と後見人の関与
認知症の親名義の不動産を売却するには、原則として成年後見人の選任が不可欠です。判断能力が不十分な状態では、親自身が有効な売買契約を結ぶことができないためです。
成年後見人が選任された場合、後見人が親に代わって売却手続きを進めます。しかし、居住用の不動産を売却する際には、家庭裁判所の許可が必須となります。これは、居住用不動産が本人の生活の基盤であり、その処分が本人の生活に与える影響が大きいためです。家庭裁判所は、売却の必要性や売却条件、代替住居の確保状況などを慎重に審査し、本人の利益に資すると判断した場合にのみ許可を出します。
売却手続きは、まず家庭裁判所に成年後見人選任の申し立てを行い、後見人が選任されてから、その方が裁判所の許可を得て買主を探し、売買契約を締結する流れとなります。このプロセスは時間と労力を要するため、早めの準備が重要です。
賃貸物件として活用する場合
認知症の親名義の不動産を売却せず、賃貸物件として活用するケースもあります。この場合も、親の判断能力が不十分であれば、成年後見人が親に代わって賃貸借契約を締結することになります。
後見人が賃貸契約を結ぶ際は、契約内容が本人の利益に合致しているか、賃料設定は適正かなどを考慮する必要があります。特に、長期にわたる賃貸借契約や、賃料が相場よりも著しく低い場合などは、家庭裁判所の許可が必要となることがあります。これは、後見人の権限濫用を防ぎ、本人の財産保護を目的としているためです。賃貸収入は親の生活費や介護費用に充てられることが多く、適切な管理が求められます。
居住用不動産の処分における考慮事項
親が実際に住んでいる居住用不動産を処分する際には、特に慎重な検討が必要です。家庭裁判所が売却を許可するか否かを判断する上で、以下の点が重要な考慮事項となります。
まず、売却の「必要性」です。例えば、親の介護費用が不足している、自宅の維持管理が困難になっている、あるいは親が施設に入所し、自宅に戻る見込みがないといった具体的な理由が求められます。次に、売却後の親の「代替住居」が確保されているか、その環境は適切かどうかも重要なポイントです。単に売却益を得るためだけの処分は、原則として認められません。
家庭裁判所は、本人の生活環境や財産状況、意思(意思能力がある場合)などを総合的に判断し、本人の保護と利益を最優先に考えます。そのため、居住用不動産の処分を検討する際は、専門家と十分に相談し、具体的な理由と代替案を明確にしておくことが不可欠です。
相続トラブルを未然に防ぐためのポイント
親が認知症と診断された場合、不動産相続にはさまざまな課題が伴いますが、最も避けたいのが家族間のトラブルです。感情的な対立は、親の介護や財産管理にも悪影響を及ぼしかねません。ここでは、そのような相続トラブルを未然に防ぐための具体的なポイントを解説します。
家族間の円滑なコミュニケーションの重要性
相続トラブルを避ける上で最も大切なのは、親が元気なうちから家族全員で相続について話し合うことです。親の判断能力が低下してからでは、親の意思を確認することが難しくなり、意見の相違が生じやすくなります。
話し合いの際には、まず親の希望を尊重し、それを踏まえて各相続人の考えを共有しましょう。特定の財産に対する思い入れや、将来の生活設計など、お互いの状況を理解し合うことが重要です。意見が対立した場合は、感情的にならず、なぜそのような意見になるのかを冷静に話し合い、妥協点を探る姿勢が求められます。必要であれば、中立的な専門家(弁護士など)を交えて話し合いを進めることも有効な手段です。早い段階で意思疎通を図ることで、将来の不和の種を摘み取ることができます。
遺言書の作成と活用
遺言書は、相続におけるトラブル防止に極めて大きな役割を果たします。特に認知症の親の場合、判断能力が低下すると有効な遺言書を作成できなくなるため、親が元気なうちに作成しておくことが不可欠です。
遺言書には、財産を誰にどのように分与するかを明確に記すことで、相続人同士の無用な争いを防ぐ効果があります。主な遺言書の種類としては、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があります。自筆証書遺言は手軽に作成できますが、形式不備で無効になるリスクや、紛失・隠匿の恐れがあります。一方、公正証書遺言は公証人が作成に関与するため、法的な有効性が高く、内容の信頼性も確保されます。認知症のリスクを考慮すると、公証人が関与し、証人も立ち会う公正証書遺言の作成を強く推奨します。これにより、後々の「遺言書は親の意思ではない」といった争いを避けることが可能です。
生前贈与の検討と注意点
生前贈与は、相続財産を減らし、特定の相続人に財産を移転することで、相続税の負担を軽減したり、将来の相続トラブルを回避したりする有効な手段となり得ます。親の判断能力がしっかりしているうちに計画的に行うことが重要です。
生前贈与には年間110万円までの基礎控除があり、この範囲内であれば贈与税はかかりません(暦年贈与)。ただし、短期間に毎年同じ金額を贈与し続けると、最初からまとまった金額を贈与する意図があったとみなされ、贈与税が課されるリスク(連年贈与とみなされるリスク)があるため注意が必要です。また、不動産などの高額な財産を贈与する場合は、多額の贈与税が発生する可能性があります。特例として、住宅取得等資金贈与の非課税枠や、教育資金贈与、結婚・子育て資金贈与といった制度もありますが、それぞれ要件が厳しく定められています。生前贈与を検討する際は、税理士などの専門家に相談し、贈与税のシミュレーションを行いながら、最適な方法とタイミングを見極めることが不可欠です。安易な判断は、かえって税負担を増やすことにもなりかねません。
専門家への相談:誰に、いつ、何を相談すべきか
認知症の親の不動産相続は、法的な知識や手続きが複雑に絡み合うため、一人で解決しようとすると大きな負担がかかります。そのような時こそ、専門家の力を借りることが重要です。ここでは、弁護士、司法書士、税理士といった各専門家がどのような役割を担い、どのタイミングで、どのような内容を相談すべきか、また相談費用と準備すべきものについて具体的に解説します。
弁護士の役割と相談タイミング
弁護士は、法律全般の専門家として、特に相続人間でのトラブル解決や複雑な法的判断が必要な場合に強力な味方となります。遺産分割協議がまとまらない、特定の相続人が遺産を独占しようとしている、遺言書の有効性に疑義があるといった「争い」が生じている状況で、代理人として交渉や調停、訴訟を行います。また、成年後見人の選任申立てや、後見人としての職務遂行も可能です。親の判断能力が低下し、家族だけでの話し合いが困難になった時や、相続人間で意見の対立が避けられないと感じた場合は、早めに弁護士に相談しましょう。
司法書士の役割と相談タイミング
司法書士は、主に不動産登記や商業登記、供託などの手続きに関する専門家です。認知症の親の不動産相続においては、相続した不動産の名義を被相続人から相続人へ変更する「相続登記」が主な役割となります。また、成年後見制度の利用を検討する際、家庭裁判所への申立て書類作成や手続きの代理も依頼できます。書類作成や手続きの代行をスムーズに進めたい場合や、成年後見制度の利用を考えているが手続きが複雑で困っているといった場合に相談すると良いでしょう。
税理士の役割と相談タイミング
税理士は、税金に関する専門家であり、相続税の計算や申告、節税対策のアドバイスを行います。相続財産の中に不動産が含まれる場合、その評価額に基づいて相続税が課される可能性があります。相続が発生した後、相続税の申告が必要な場合や、将来的な相続税の負担を軽減したいと考えている場合に相談しましょう。特に、生前贈与や不動産の有効活用など、事前にできる相続税対策について具体的なアドバイスを受けたい場合は、相続が発生する前からの相談が有効です。
相談費用と準備するもの
専門家への相談費用は、依頼内容や事務所によって異なります。初回相談を無料としている事務所も多いため、まずはそうした機会を活用してみましょう。本格的な依頼となると、着手金や成功報酬が発生するのが一般的です。
相談時には、以下の情報や書類を準備しておくとスムーズです。
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親の状況: 認知症の診断名、現在の判断能力の程度、病歴など
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家族構成: 相続人の範囲、各相続人との関係性
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財産状況: 不動産の所在地・種類(土地、建物など)、預貯金、有価証券などの概算
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関係書類: 親の戸籍謄本、不動産の権利証(登記識別情報通知)、固定資産税納税通知書、預貯金通帳など(手元にある範囲で構いません)
これらの情報をもとに、専門家はより具体的なアドバイスや手続きの提案をしてくれます。
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Q. 親が認知症でも不動産を売却できますか?
親が認知症で判断能力が低下している場合、原則として本人の意思能力がないとみなされ、不動産の売却手続きを単独で行うことはできません。これは、売買契約が有効に成立しないためです。この場合、家庭裁判所に申し立てを行い、「法定後見人」を選任してもらう必要があります。後見人が親の代理人として売却手続きを進めることになりますが、居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要となるなど、厳格な手続きが求められます。
Q. 成年後見制度を利用しないと、不動産は相続できませんか?
成年後見制度を利用しないと不動産を相続できないわけではありませんが、手続きが非常に困難になる可能性があります。特に、遺産分割協議は相続人全員の合意が必要であり、認知症で判断能力がない相続人がいる場合、その合意が法的に無効と判断されるリスクがあります。このような状況を避けるためには、やはり成年後見制度を利用し、後見人が本人に代わって遺産分割協議に参加するのが一般的です。成年後見制度を利用しない代替手段としては、任意後見契約の締結などが考えられますが、これは判断能力が十分なうちに準備しておく必要があります。
Q. 相続税はかかりますか?
不動産を含む遺産を相続する際には、相続税がかかる可能性があります。ただし、すべての相続に相続税がかかるわけではありません。相続税には「基礎控除」があり、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算される金額を超える場合にのみ課税されます。例えば、法定相続人が1人の場合は3,600万円、2人の場合は4,200万円が基礎控除額となります。遺産総額がこの基礎控除額以下であれば、相続税はかかりません。不動産の評価額は路線価や固定資産税評価額などを基に計算されますが、専門的な知識が必要なため、税理士に相談することをおすすめします。
Q. 実家を相続する際、空き家になるのが心配です。
実家を相続して空き家になることが心配な場合、いくつかの選択肢が考えられます。まず、売却を検討する方法です。適切なタイミングで売却できれば、まとまった資金を得られますが、売却には手続きや費用がかかります。次に、賃貸物件として活用する方法もあります。賃貸に出せば家賃収入を得られますが、修繕や管理の手間が発生します。また、特定の場合には「空き家特例」という税制優遇措置が適用されることもあります。これらの選択肢は、不動産の立地や状態、ご自身の状況によって最適なものが異なりますので、不動産会社や専門家と相談して、ご自身の状況に合った最適な方法を検討することが大切です。
弊社ではご相談の受け付けからご提案までサポートさせて頂いております。ご不明点やご相談がございましたら、是非お気軽にご連絡くださいませ!
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まとめ:認知症の親の不動産相続を安心して進めるために
親が認知症と診断された場合、不動産相続の問題は複雑で、多くの不安を伴うものです。しかし、適切な知識と準備があれば、トラブルを避け、親御さんの財産を適切に管理し、円滑な相続を実現することは十分に可能です。本記事を通じて、認知症の親御さんの不動産相続に関する基本的な知識から、成年後見制度の活用、具体的な手続き、そしてトラブル回避策まで、多岐にわたる情報をお届けしました。
本記事の要点と今後のアクション
認知症の親御さんの不動産相続で最も重要なのは、「親の判断能力が低下する前に、あるいは低下の兆候が見られた段階で、早めに行動を起こすこと」です。本記事で解説した要点を再確認し、今後のアクションに繋げましょう。
まず、親御さんの判断能力の状況によって、不動産の売却や遺産分割協議の進め方が大きく変わることを理解してください。判断能力が不十分な場合は、成年後見制度の利用が不可欠となるケースが多くなります。成年後見制度には、任意後見と法定後見があり、それぞれメリット・デメリットがあるため、親御さんの状況やご家族の意向に合わせて慎重に検討することが大切です。
次に、相続トラブルを未然に防ぐためには、家族間でのオープンなコミュニケーションが何よりも重要です。親御さんの意思能力が十分なうちに、遺言書作成の検討や生前贈与の計画を立てることも有効な手段となります。
そして何より、これらの複雑な手続きや判断を一人で抱え込まず、専門家の力を借りることが成功への近道です。弁護士、司法書士、税理士といった専門家は、それぞれの分野で的確なアドバイスとサポートを提供してくれます。
本記事で得た知識を基に、まずはご家族で話し合いの場を設け、必要に応じて専門家への相談を検討してみてください。一歩踏み出すことで、認知症の親御さんの不動産相続に関する不安は必ず解消に向かいます。
監修者情報
公開日:2026.07.13
高木いおり
代表の私は1964年、春日井市で生まれ育ち、居住しております。 地元の、いずみ幼稚園、神領小学校、東部中学校、春日井高校、名古屋大学 医療技術短期大学部看護学科(現、医学部保健学科看護科)卒で、宅地建物取引士と看護師免許も持っています。